ナカ NAKAMI

「辞めます」が喉まで来ているなら — 出るときと踏みとどまるときを分ける三つの質問

辞めたい気持ちは合図であって、結論ではありません。人が理由か仕事が理由か、力切れか不満か。決める前に自分に聞く順番の話。

「辞めます」の一言が、喉まで来ています。今日一度こらえて明日もこらえて、でもいつか感情が振り切れたら本当に言ってしまいそうです。この状態でいちばん危ないのは、「我慢しろ」でも「出てしまえ」でもありません。理由がわからないまま決めてしまうことです。

一つめの質問 — 人が理由か、仕事が理由か

退職衝動は、大きく二つに分かれます。

人が理由なら、上司や同僚が変われば収まります。同じ会社の別の部署へ動くだけでも足ります。この場合、会社ごと出るのは効きすぎる薬かもしれません。次の会社にも、似た人はいます。

仕事が理由なら、人が変わっても良くなりません。仕事の中身が合っていないか、伸びが止まっているか、方向がずれています。この場合は、こらえても解決しません。

見分け方は簡単です。その人が明日いなくなったところを想像してみてください。それでも辞めたいなら仕事が理由で、通えそうな気がするなら人が理由です。

二つめの質問 — 力切れか、不満か

こちらの方が大事です。辞めたいのに調べる力が残っていないなら、それは不満ではなく力切れです。

力切れの状態には特徴があります。職務経歴書を開いて、そのまま閉じます。有給をとった日は何もせず寝ています。休んでも戻りません。この状態が、もう何か月も続いています。

ここで「転職の準備をしなきゃ」は、外れた処方です。空っぽの電池で転職活動をすると、転職もできず今の仕事も崩れます。回復が先で、転職はそのあとです。有給を続けて取るなり、休みをまとめるなり、まず入れる方が先です。

不満の状態はちがいます。エネルギーがあります。腹が立って、もどかしくて、だから何かしたくなります。このエネルギーは、転職の準備に使えます。

三つめの質問 — いま出たら、何が残るか

感情で出した退職届は、たいてい数か月後に後悔になって戻ってきます。理由は一つです。出るときに、次がなかったからです。

出る前に、三つを確かめます。

  1. 次の場所があるか — なければ、最低三か月分の生活費があるか。家賃と固定費だけでも数えておきます
  2. ここから持っていけるものが整理できたか — 実績、推薦してくれる人、関係
  3. 出る理由が、次の会社で繰り返されないか — 繰り返すなら、出る意味がありません

三つのうち一つでも欠けていれば、まだそのときではありません。出るという決定は保ったまま、時期だけ後ろにずらします。

タイプごとに、危ないところがちがいます

  • もう荷造りが済んだ人 — 心が出た状態のまま長く粘ります。その期間が延びるほど、中途半端な時間だけが積み上がります
  • 明日ぶちまけて後悔する人 — 計画なしで出ると次がもっとしんどくなります。一晩だけ寝かせるのが答えです
  • 静かに転職準備中 — 一人で全部抱えて疲れきります。二つの仕事を同時に回しているのと同じです
  • 顔に出さない我慢王 — 我慢が能力だと誤解されます。言わなければ、いちばん重い分がこちらに回りつづけます
  • 時期を待つ人 — 「その時期」の基準がないと、その時期は永遠に来ません。日付か数字で書いておく必要があります

踏みとどまった方がいいとき

逆に、とどまる方が正しい場合もあります。出る理由を一文で書けないとき。なんとなく嫌だ、は理由ではありません。理由が整理できないまま出ると、次の会社の同じ場所で引っかかります。

もう一つは、悪くもなく良くもないとき。この状態がいちばん長く続きます。決めないことも決定です。何年か先に何が残るのかを、一度は計算しておいてください。


退職衝動診断は12問で、いまの状態が人によるものか仕事によるものか、力切れか不満かを分けます。出た結果によって、今日やることがちがいます。→ /quizzes/quit-urge