5分だけのはずが深夜2時 — 無限スクロールが指を離してくれない仕組み
ショート動画をやめにくいのは意思の弱さではありません。次の一本を期待させる仕組みと、退屈に耐える時間が集中力の材料になる話。
寝る前に5分だけ、と思って開きました。スマホを置いたのは深夜2時です。さっき見た動画が何だったか思い出せないのに、指はまだ上へ動いています。翌日も眠いまま、また同じ時間に開きます。
これを「自分の意思が弱いから」と考えているうちは、なかなか変わりません。そもそも、離しにくいようにつくられているものに手を伸ばしているからです。
気持ちよさより、「次に何か来そう」
ドーパミンは「気分がよくなる物質」として知られていますが、実際には「このあといいことがありそう」という合図に近いはたらきをします。ごほうびそのものより、ごほうびを待っている瞬間のほうが強く出ます。
ショート動画は、ここをまっすぐ突いてきます。次の一本が何なのかは分かりません。面白いかもしれないし、そうでもないかもしれない。この分からなさが、指を動かし続けます。毎回当たるものには、人は案外すぐ飽きます。たまに当たるから離せなくなるのです。
面白くないのに、なぜ送ってしまうのか
ここが肝心なところです。無限スクロールにつかまっている人は、面白いから見ているのではありません。次が面白いかどうか分からないから送っているのです。指が先に動いて、頭はあとからついてきます。
だから「さっき見たものが思い出せない」のは、ごく自然なことです。中身を味わったのではなく、次へ送るという動作のほうを繰り返していたのですから。
本当に減っているのは、時間ではありません
深夜2時までの時間がもったいない、と思いがちですが、失っているものはもう少し別のところにあります。退屈が一秒ももたなくなることです。
信号待ちの30秒でスマホを取り出します。エレベーターの中でも、コンビニのレジ待ちでも、満員電車の中でも。何もしていない時間が、一日のどこにも残りません。ところが集中は、まさにその時間から出てきます。外から刺激が来ないあいだに、頭が自分の考えを転がす。そのすき間がなくなると、長いものを追いかける力が細っていきます。
本が読み進められなくなった、長い文章を見るとまずスクロールしてしまう。心当たりがあれば、もう始まっています。
つかまり方は、人によって違います
同じスマホの話でも、出方は人それぞれです。
- 夜につかまる人 — 昼はふつうなのに、夜になると歯止めがきかなくなります。寝る前、いちばん判断がゆるむ時間帯です
- 昼につかまる人 — 通知とタブのあいだを行き来し続けて、夜はむしろちゃんと寝ます。忙しかった一日が実際に残したものは少なめです
- 浅くつかまる人 — 関心の対象が次々に変わります。深くなる直前でやめて、いつも入口までで終わります
- つかまっていないように見える人 — 面白くないことも淡々とやります。そのかわり、自分が何をやりたかったのかを見失いがちです
自分がどちら寄りかで、打つ手も変わります。
実際に効くのは、この二つくらいです
気合でやめようとすると、たいてい失敗します。仕組みのほうを少し動かすほうが早いです。
充電器を、ベッドから二歩離れた場所にさす。 これだけで夜のスクロールはかなり減ります。寝ころんだまま見られなければ、見なくなります。意思ではなく、距離の問題です。
一日に一度、何もしない10分をつくる。 スマホを持たずに座っているか、歩くだけです。最初はそわそわして落ち着きませんが、一週間ほどでその時間に考えが戻ってきます。退屈に耐える筋肉が、もう一度ついてくる感じです。
どちらも、生活を大きく変える話ではありません。今夜のうちに、片方だけ試せます。
ドーパミン依存度診断は、12問で自分がどんなつかまり方をしているかを見ていきます。結果ページには、そのタイプに合う処方せんがひとつずつ付いています。